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【相続の対象となる相続財産】

0 はじめに
  相続財産を分けるにあたり、「うちの家族は仲が良いから平等に分けるので問題ない。」
このようなお話をよく耳にします。では、どこからどこまでの財産を平等に分けるのでしょうか?
今回は、相続手続きにおける「相続財産の範囲」の概要についてお話します。
(詳細な論点は個別に記事にする予定です。)


1 民法の規定
民法第896条
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

注・相続人とは、相続財産を受け継ぐ人のことです。
  ・被相続人とは相続される人、つまり亡くなった人のことです。
  ・相続開始の時とは、相続人の死亡のときです。(民法第882条)

  つまり、相続される財産とは、民法第896条にいう
A「被相続人の財産に属した一切の権利義務」に該当し、かつ
B「被相続人の一身に専属したもの」以外をいいます。


2 A「被相続人の財産に属した権利義務」に該当するか

  この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続財産、または遺産と呼ばれるもので、プラスのものだけではなくマイナスのものも相続財産とされ、原則として財産法上の法的地位といえるものであれば、全て包括的に相続の対象となります(包括承継)。
例えば、父親(被相続人)が騙されて土地を売る契約を結んでしまった直後に死亡した場合には、その妻や子(相続人)は、「騙されて土地を売る契約を結んだという地位」を相続することになり、登記移転義務、土地の引渡し義務、代金請求権、取消権、解除権のほか、善意・悪意、過失といった主観的態様をも受け継ぐことになります。


3 B「被相続人の一身に専属したもの」に該当するか
  「被相続人の一身に専属したもの」とは、被相続人その人のみを対象としている権利義務で、その人でなければ成立しない、または認められるべきではないものです。
  例えば、有名な画家に絵を描いてもらう権利を購入していたとして、その画家が絵を完成させる前に亡くなった場合には、その画家の子どもら相続人が絵を完成させてその債務を履行するといったことはできませんので、相続されないということになるのです。
    その他にも以下のような地位は一身専属とされます。
    ・代理(民法111条1項各号)
    ・使用貸借(民法593条、同599条)
    ・委任契約(民法653条1号)
    ・組合契約(民法679条1号)
    ・扶養請求権
    ・生活保護受給権
    ※なお、事業等の許認可については、許認可ごとに承継できるものとできないものがあり、手続きも異なります。


4 生命保険金
  生命保険金は相続財産にあたるのでしょうか?最近の生命保険は、積立預金の性質を持っており、貯蓄制度として機能しているものが多くあります。そのような場合ですと、生命保険の受取人は実質的には被相続人の貯蓄財産から贈与を受けたに近いわけですが、それでも判例・通説は相続財産と考えていません。ですが、生命保険金の受取人に指定された人だけが保険金を受け取り、その他の財産を分割するとしたら、不公平だということもありますので、考慮するということを肯定する説が最近では有力なようです。


5 さいごに
  いかがでしょうか?このように相続財産に関しては、一概に判断することが難しい場合があります。
当事務所では相続財産の調査も承っておりますので、お気軽にご相談ください。


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